多言語情報化調査研究報告書
〜留学生による掲示物表記および区役所窓口調査〜
調査の趣旨
日本で暮らす外国人が苦労する理由のひとつに、日本語が話せないあるいは読めないために行政や日常生活に必要な情報を手にすることができないということがある。MIFAや目黒ユネスコ協会などのボランティア組織では、日本人ボランティアが外国人に日本語を教える活動を活発に行なっているが、十分な日本語能力を習得するまでにはどうしても一定の時間が必要である。従って、在住外国人が安心して目黒に住むためには、日本語学習の機会を提供するだけでなく、生活に必要な情報を多言語化して提供していくことも重視しなければならない。そこでMIFAでは平成16年度、街中の掲示物や公共施設の表示がどれだけ外国籍住民に理解されているのか、留学生による多言語表示調査を行なうことにした。
調査に協力したのは4名である。いずれも日本語会話が非常に堪能で、漢字・カタカナを読める程度の日本語能力を備えている人たちだが、目黒区というまちが外国籍住民の目にどのように映るのか実地調査を通して観察してもらい、積極的な意見を聞くことができた。
本報告書の調査結果を踏まえて「外国人の住みやすい目黒」にするためにはどうすればよいかを行政機関や地域の人々と一緒に考える機会となることを期待したい。
平成17年3月
財団法人目黒区国際交流協会
まとめと提言
1 外国人には言葉の壁がある
道路、駅、施設の表示や行政案内は、ごく一部を除き日本語で書かれている。日本に住む外国人は来日するとひらがなを勉強するが、漢字を読めるほどの日本語能力を有する人は多くない。話すことが上手でも漢字が読めない人、漢字を勉強することをあきらめた人が多い。外国人の眼から見た街の表示は私たち日本人と同じ様には映らないという事実をまず認識しなければならない。
2 在住外国人には情報が届かないことによる不利益が存在する
図書館、郵便局の国際スピード郵便など、外国人にとっても有用な施設やサービスが数多く存在するが、外国語表記が不十分なために外国人の多くは存在そのものを知らされないでいる。制度は平等であっても制度を利用するための情報を入手できないという不平等がある。
3 外国人も区民
区役所が提供するサービスが多言語化されていないために、外国人がそのサービスを受ける権利を行使できないことがある。家賃助成、児童手当、緊急一時保育などは区民であれば誰もが利用できるはずだが、外国人に情報が届かなければサービスを利用できない。
4 外国人は情報が届かないために差別を受けていると感じる
日本人と同じ権利を受けられなかった、あるいは正確な情報が知らされていないために不快な思いをした、差別を受けたと感じる外国人がいる。一例として、駅前の違法駐輪通知・駐輪場の活用案内の多言語化によりこうした不満を軽減することができるのではないか。
5 掲示物に効果的な表記方法を考える
漢字が読める外国人は中国と台湾出身者だけだ。韓国では中学校で漢字(繁体字)を勉強するが日本語の漢字を読める人は少ない。来日した外国人はまず、ひらがなを勉強するので、ふりがなのルビをふると効果的だ。目黒区には100か国を超える外国人が住んでいることを考えると、最も有効な言語は英語だろう。日本ではカタカナでルビをふる場合が多いが、カタカナは中国人や韓国人をも苦労させる日本独特の表記方法なので避けたい。〒やiなどの標準案内用図記号(ピクトグラム)で表示することも効果があるだろう。
6 外国人の利用頻度が高いものやサービスを優先して多言語化する
来日した外国人が必ず立ち寄る場所は、外国人登録と国民健康保険窓口である。区役所のなかでもこの2つの窓口を優先して多言語化することで、外国人へのサービスは大きく向上する。具体的には、窓口担当者の接遇マニュアル化、多言語による書式の記入見本の提示、通訳体制の確立、外国語パンフレットの提供、よくある質問を窓口担当者が勉強しておくことなどが考えられる。
庁舎以外の施設では図書館や駐輪場などの表示を多言語化することで、外国人の利用度が増すだろう。
7 窓口で使える外国語対応マニュアルを作成する
外国人が窓口を訪れた時にスムーズに対応できるようなマニュアルがあるとよい。外国人を不安にさせない迅速な対応を窓口担当者が示すことにより、外国人は大きな安心を得る。「何の用件か」「日本語が話せるか」「何語を話すか」「通訳を呼ぶのでしばらくお待ちください」といった手順をマニュアル化し、英語を話さない窓口担当者でも落ち着いて対応できる仕組みをつくるよう検討する。
8 多言語印刷物は目にふれる場所に置く
郵便局や駅、区立体育館のケースだが、英語版の印刷物の有無を尋ねたところ事務室から取り出して渡された。外国人の利用者が相対的に少ないこと、窓口のスペースが狭いことなどが理由らしいが、多言語印刷物は目にふれる場所に置いてほしい。そうしなければ作成した価値も半減する。
9 区役所職員に外国人区民を受け入れるための研修を行なう
今後ますます増えると予想される外国人区民を受け入れるための職員研修を行なう事が必要である。単なる英会話レッスンではなく、外国人の意見を聞いたり、窓口で必要な会話を練習したり、在住外国人をとりまく状況を理解する講座などが有効だろう。
10 多言語化作業にはMIFAの通訳・翻訳ボランティアを活用する
資料の多言語翻訳にはMIFAの通訳・翻訳ボランティアを活用してほしい。
施設別注意点
(まちの案内板、地図)
・ 行き先案内にはできる限りふりがなをふる。
・ 地名、駅名にはふりがなを振るかローマ字を表記する。
・ 広域避難場所の地図が目立たない。
・注意・禁止事項に限って特に英語表示が多い。(駒場野公園)
・ 中目黒駅は公共の掲示と商業用看板、警察の掲示などが入り乱れていて分かりづらい。区の広報スタンドも落書きで薄汚れている。関係機関による整理が必要だ。
(公営・町会掲示板)
・ 街の掲示板を利用して外国人に情報を提供することも有効である。新聞を購読していない外国人はマンスリーメグロを手にする機会が少ないため、外国人の目に留まる掲示方法を考える。特に、フリーマーケットなど“お得な”情報を重点的に。
(郵便局)
・ 多言語表示がほとんど見受けられない。
・外国人が特に利用するサービスについて多言語表示する。(国際スピード郵便、海外送金、国際小包郵便)
・ カウンターの「郵便」「送金」の表示は日本語と英語で書かれているが、英語表示部分に別の日本語のお知らせが貼られ、結果として英語の表示が読めないことがある。きちんと見えるようにする。
・ 窓口で番号札を取る、郵便や送金に分かれて列に並ぶなど、利用のしかたを多言語で表示する。
(図書館)
・ 図書館入口の利用案内を多言語表示する。日本語にはふりがなのルビをふる。
・ 図書館に設置されている「さんまくん検索」のHELP(English)が「準備中」のままなので、早急に英語でも利用できるようにする。
・ 図書カードの作成方法などを多言語化し、広く利用をアピールする。
(駐輪場)
・ 駅前にある違法駐輪の看板にひらがなのルビをふる。
・ 標準案内用図記号(ピクトグラム)を利用して駅周辺の駐輪が違法であることを知らせる。
・ 自転車登録制度のPRを多言語化し、広く利用をアピールする。
・駐輪場内の注意書きを多言語化する。
(西口・東口玄関)
・ 日本語・英語が読めない人のためにインフォメーションを示すピクトグラム「i」を表示する。
・ 庁舎内案内図の各課がすべて英文表記になっているが、外国人に最も関わりの深い4か所(外国人登録、外国人相談、国民健康保険、MIFA)を太字あるいは色を変えて表示し、目立つようにする。
・外国人が来庁した場合の対応マニュアルを作成する。
(区役所の各課窓口)
・ 文化背景の異なる国からの外国人が訪ねてきても理解できるような、配慮ある対応することが望まれる。そのためには国際理解の啓発講座を研修に取り入れる。
・ 外国人がよく訪れる窓口では、手続き書類や手順を多言語化する。